《1》

よっすぃ〜はベッドにもたれて足を広げ
自分の前に出来たスペースをぽんぽんと叩いた。
私は当然のようにそこへ収まり、
よっすぃ〜の胸にもたれる。
それは小さいころから、私より身体が一回り大きいよっすぃ〜との
定番のくつろぎポジションだった。
ただ、あの頃と違うのは
お互いに香水の匂いがすること。

「ごっちん」

耳元でよっすい〜が話す。

「結婚しよ」
「結婚???」
「そう、結婚」
「…って女同士だよ?」
「そうだよ、だから形だけの結婚」

そしてよっすぃ〜は私を抱っこしたまま
ぽつぽつと語り始めた。
両親がとある秘密組織の中心人物だったこと。
その組織では世界を引っくり返すような武器を開発していたこと。
その武器の作り方を書いた重要文書が狙われていたこと。
引っ越したあとにとある組織に執拗に狙われていたこと。
両親はその組織によって殺されたこと。
その重要文書はもうこの世の中に存在しないこと 
など…。

「その文書が存在しないならなんで狙われるの?」
「親父たちが殺される前に
ウチの頭の中にその文書を叩き込んだから」
「うそ…。そしたら今度はよっすい〜が殺されるの?」
「いや、殺してしまったら
文書が引き出せないからね」
「そっか…」
「でもつかまえてもそう簡単にウチが話すわけないじゃん?
だから、奴らはウチの大切なものを
一つ一つ壊していくって言った。
その言葉どおりに、一つづつ壊されていってる」

そこまで話すと、よっすぃ〜は言葉に詰まった。

「ウチが大事に思ってるのはもうあと一つだけ…。
それまでなくしたら…。
だから、守るために一緒にいることに決めた」
「…え?」
「ウチのあと一つの大事なものってごっちんだよ」

突然の告白だった。

「変だろ? 10年以上も前の
それも幼稚園児の頃に言った”ひとみはごっちんと結婚する”
ってのが頭の中から離れないんだ」

そう言ってよっすぃ〜は少し頬を赤く染めた。
よっすぃ〜はどうやら10年余り私を好きでいてくれたらしい。

「私…狙われるの?」
「うん…。ごめんね、
ウチと関わったばっかりに。
って言うか、ウチが好きでいたがためにこんな事になって」

よっすぃ〜の私を抱き締めている手が
ぎゅっと強くなった。
私は、女の子にそういうことをされるのは
もちろん年頃になってからは初めてだった。
でも全然いやじゃなかった。
むしろ、そのぬくもりは懐かしくていとおしかった。

「でも、守るから。
きっとこの命に代えても守るから」
「やだ」
「へ?」
「私のためによっすい〜が死ぬのはやだよ?」
「ごっちん…」
「一緒に生き延びよ?」
「うん…ありがと…」

今のよっすぃ〜は仕事場で見せる吉澤真希ではなかった。
声もしぐさもかもし出す雰囲気も
私と同じ年頃の女の子のそれだった。
その表情さえも
いつもの少年らしさはどこへやら、
かわいい少女そのままだった。

「今のドラマが終わったらさ。
うち、休業宣言する」
「うん」
「そのときに、ウチはごっちんと結婚したって言うんだ」
「すごいね」
「でさ、逃げよ」
「逃げるの?」
「うち、一人だったら戦ってもいいんだけどさ
ごっちんを危険な目にあわせたくないんだ」
「私は別にいいけど?」
「え?」
「よっすぃ〜となら危ない目でもいいかなあ」

私何言ってんだろ。
よっすぃ〜とは結婚するフリをするだけなのに。
危険な目に合わされるんだから
バカやろ〜ってキレてもいいくらいなのに…。

「それって、ウチ、喜んでいいの?」

今度はウチが赤くなる番だった。

「そのかわり守ってよ?
私まだ死にたくないんだからね」

テレ隠しに、私は振り返ってよっすぃ〜にぎゅうって抱きついた。

「わかってる。
絶対に痛い目に合わさないから」

抱き締めてくれるぬくもりを
私は信じてついていこうと思った


つづく

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