《5》

〜ひとみ〜

 重役会議室をノックする音、社長と専務とチーフマネージャーがあたしを囲んでいるところにごっちんが入ってきた。
「ちょうどいい、2人で話しなさい」
「え? あ…」
 何がなんだかわからないごっちんは社長たちが部屋を出ていくのをただ呆然と見送る。
「…よっすい〜、どうなったの?」
「ごっちん…」
 そこまで言ったあたしは居た堪れなくなって、すっと視線を外した。
「……別れよう」
「……何?」
「だから…別れよう、ウチら」
「…社長がそう言ったの?」
「違う、そうじゃないけど」
「じゃあ、なんで?」
「ごっちん…」
「…だって、ほんの少し前まで、ラブラブだったんだよ?」
「…」
 あたしは視線をそらして何もいえない。
「ねえ、私のこと、一瞬でいやになったの? それとも前から嫌いだった?」
「ごっちん、違う、それは違うんだよ」
「何が違うのよ!」
「お願い…わかってよ…」
 あたしはごっちんの両肩を掴んで頭をさげる。
「わかんない…わかんないよ!!」
 最後は涙声でそう叫んで、ごっちんはあたしの腕からすり抜けて言った。
「くそ!!」
 あたしは苛立たしさから、部屋の壁を思いっきり殴る。今のあたしには、追いかけていいのか悪いのか、それすら判断できない。でも…、ごっちんを隙だった本能が、追いかけろと警鐘を鳴らす。あたしは部屋を飛び出した。
 
 ケガのせいでいつもの半分の走れない。それでもあたしはごっちんを捜して追いかける。
「あ…中澤さん…」
 途中で中澤さんに会った。
「なあ、何があったんや? ごっちん、泣きながら走っていったで」
「はあ…」
「あんた、まさか」
「仕方なかったんですよ…。それしか彼女守る方法見つからなかった。とにかく、追いかけます」
「ちょっと、手、血、出てるで」 
 気がつくと、さっき壁を殴りつけた右手が血まみれだった。中澤さんは自分のハンカチをあたしの手に巻きつけてくれた。
「すいません、じゃあ」
「気いつけや。足、あんまり無理するんやないで」
 頷きあたしは走り出す。でも、あたしの敵は足じゃなく時間だった。集合時間があたしの行く手をさえぎったんだ。

 その日のあたしのステージはめちゃくちゃだった。クリスマスライブ等ことで楽しみにしていたファンも多かっただろう荷、笑えない踊れない、最低の吉澤ひとみをさらけ出してしまった。
「よしざわー!」
 ステージが終わった後、予想通りに圭ちゃんに呼び出され、説教を食らう。圭ちゃんの様子じゃ、まだメンバーは何も知らないようで。ってか言えないよねえ、ばれたなんてこと。

 あたしは仕事が終わった後、タクシーの中でごっちんに電話をする。だけど、留守電で。拒否られてるのかな…。仕方ないか、別れ切り出したのあたしだし。ふと窓の外に目をやると、ホワイトクリスマスを彩る雪が舞い落ちてきていた。

 つづく

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