《4》

真希視点

吉澤さんが仕事に行った日は、
私も仕事だった。
私の仕事は雑誌のモデル。
ハイティーン向けの雑誌の専属みたいのをやっていて
今日はそれの撮影だ。

「真希ちゃん、来月号上がったよ」
「ありがとうございます」

編集の人からもらった来月号の雑誌。
待ち時間にぱらぱらとめくる。

「あ〜、この子かわいい」

隣で一緒に見てた同じモデルの美貴が私のめくっていたページを手で止めた。

「ん? どれ?」
「ほら、この子」

そのページには「輝け青春」とかタイトルがついてて
素人の、いろんな仕事してる子がピックアップされてるんだけど…

「あ…」
「どうしたの?」
「私、この子知ってる…」

そこには吉澤さんの写真が載っていた。

「東京消防庁新宿消防署特別救助隊 吉澤ひとみ…
って、何でこんな子知ってるの?」
「ちょっとね…」

吉澤さんってそんな仕事してるんだ。
東京消防庁初の女性レスキュー隊員だって…
すごいな…
ねえ、なんでしってるの?って追求してくる美貴を
適当にごまかして…
だって一緒に住んでるなんていえないじゃん。
ってか、何でいえないんだろうって話だけどね。
別にやましい関係じゃないし。
でもなんとなく言いづらかったんだ。


次の日の朝、私が起きると、吉澤さんは帰ってきてて…
…なんか、ずっと咳してるよ…
毛布を頭からかぶって苦しそうな咳をする吉澤さん。
私は毛布をそっとめくった。

「…吉澤さん?」
「後藤さん…」

息をしづらそうに肩で息をしてる吉澤さん、
汗ぐっしょりで…
見るからにやばそう…

「どうしたの?」
「仕事でさ…ちょっとミスして…こんななっちゃった…」
「…あ…どうしたら…どうしたらいい?」
「ん?…いいよ…ほっといてくれて…そのうち…治るから…」

そんなこと言われても…。
しゃべるのもやっとって感じで
しゃべったら咳込んで、こんな苦しそうなのに
ほっとけないよ……
そう思ったら、涙が出てきた。

「何で泣くのさ…」

困ったような笑顔を浮かべる吉澤さん。

そうだ! 
今日の雑誌に新宿消防署って書いてあった。
電話してみよう。
どうしたらいいかわかるかもしれない。
私は吉澤さんの汗をそっとぬぐってから
電話をかけるために席をはずした。


「あ、もしもし、私、後藤といいます。
そちらの吉澤さんの…吉澤さんの友達なんですけど…」

私の電話に出てくれたのは保田さんって事務の人で
今日は非番だからって来てくれることになった。

 

「すいません、なんかお世話かけちゃって」
「いいわよ、それよりどう? 吉澤は」
「相変わらず辛そうで…」
「吉澤? 吉澤?」
「……保田さん!?」
「吉澤、病院行くわよ」
「え?…はい」
「あの…」
「大丈夫よ、消防隊員、たまに煙吸い込んでこうなったりするの。
吉澤はそれがきついだけ。
みんなが行く呼吸器科があるから。そこ連れてくから」
「はい、すいません」

保田さんの車まで、吉澤さんは私の方を借りて歩く。
初めて触れた吉澤さんの身体は
すごい筋肉質で、がっちりしてて
私と同じ年だとは思えなかったし…
私と同じ性別だとは思えなかった。

処置室で吉澤さんが手当てを受けている間、
保田さんはずっと私のそばにいてくれた。

「吉澤と…一緒に住んでるの?」
「はい…」
「消防隊員の家族って大変よ。
勤務は不規則だし、危険な仕事だし
そんな仕事ゆえに身体を壊したり、怪我したりってこともあるし。
吉澤の場合は女だから、余計に大変だともう」
「ただの…同居人なんですけどね…」
「そうなの? でも大変なことだけは覚えておいてあげて?」
「はい」

病院で処置を受けたら急速に吉澤さんの体調は良くなった。
やはり、煙と粉塵で気管支が収縮して
喘息の発作と同じ状況になっていたらしい。

「すいません、保田さん」
「いいのよ、これくらい」

吉澤さんが、保田さんに頭を下げている。

「後藤さん、何で書に電話したの?」
「ごめんなさい、私…」
「みんな忙しいのに、私なんかのために呼んじゃだめじゃん。
ほっといてくれたら治るって言ったのに」

吉澤さんは怖い口調で私にそういった。

「ごめんなさい…でも、苦しそうだったから…」
「だからほっといてくれていいんだってば」
「ちょっと、吉澤」
「はい?」
「あんた、それ言いすぎよ?」
「でも、迷惑かけて…」
「私なら、迷惑だなんて思ってないわよ。
あんたっだて、一人だったら心細かったはずよ?」
「……」
「後藤さんね、書に電話してきたとき
どうしよう…って半泣きだったのよ?
心配してくれる人がいるってありがたいことじゃない。
だからそんな邪険にしたら罰当たるわよ?」
「そうっだったんっすか…」

吉澤さんはばつの悪そうな顔で私を見た。

「…ごめんね?」
「ううん…」
「ありがとう」
「うん…」


「じゃあ、私はここで」
「はい、ありがとうございました」

マンションの前で、保田さんは私たちを降ろしてくれた。

「吉澤」
「はい」
「こんなかわいい子、泣かしちゃだめよ?」
「な…保田さん!!」
「じゃあ、また」

走り去る保田さんの車。
そこに残されたのはテレまくっている吉澤さん。

「かわいくなんか、ないのにねえ」

私がそういったら
ますます吉澤さんの顔が赤くなった。
なんでだろ?


つづく

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