<プロローグ>

ひとみ視点

ウチの名前は吉澤ひとみ。19歳。
東京消防庁新宿消防署特別救助隊に所属されたばかりのピカピカの一年生。
消防学校のころには女子寮に入っていたんだけど、
今回、正式配属されたのを機会に寮を出ることにした。
ウチが新しく住むマンションは同じ新宿区内ながら
二駅外れた住宅街にある。
実はそのマンションのオーナーがウチの父さんのお兄さんで
管理人がその娘、つまりウチの従姉妹がやっている。
なので、そんな一等地の物件ながら
今回、超格安でウチに貸してくれることになったのだ。


そして、今日、ウチは新しいマンションに帰る。
荷物は非番の明日とどくことになっていて、今日は身一つで帰宅なんだ。

オートロックの玄関を開けるのはどきどきした。
なんか、重厚なドアだ。
鍵をカチャリと開ける。
あれ? 電気ついてるよ。
ウチは従姉妹のカオリンが気を利かせてつけてくれていたんだろうと
納得してリビングに…。


バコッ!!!

突然、クッションが飛んできた。
な、なんだ??
そのあとからも、いろんなものが飛んできた。

「「人の家で何してんの??」」

二つの声が重なった。
飛んでくる物体が途切れて、ウチは改めてリビングを見た。
そこにはウチと同じくらいの年頃の
茶色い髪の長い女の子がいた。

「ここ、ウチの家なんだけど…」
「は? 私、今日ここに引っ越してきたんだけど」

なんで?
ウチはあわててカオリンに電話する。

「カオリン、どうなってんの?
家に帰ったら女の子がいるんだよ」
『ごめんね、ウチのパパが得意先の娘さんに貸したとか言ってんの』
「はあ? ウチ、行くとこないよ?」
『しばらく、そのままでいれないかなあ…』
「ええ!!」
『早急にちがうとこ捜すから…それまで、一緒にいれない?』
「一緒にってこの子とだよね?」
『うん。ちょっと代わってくれる?』

カオリンってば、全く何を言い出すんだ。
ウチは隣で訝しげにウチを見てる子に電話を渡した。
女の子もカオリンと話しながら「ええ!!」とか言ってるよ。
「何で、私が男の子と一緒に暮らさなきゃいけないんですか!!」
だってさ。
…え? ウチ、女だよ?


「ちょい待ち」

うちは話中のその子に話しかけた。

「はい?」
「あのさ、悪いけど、ウチ、女」
「ええええ!!」

そんな驚くなよ…。
うちは後ろでひとつに束ねてた髪を解いた。
そして、少女の手をつかみ、自分の胸に持っていった。
驚いた顔のその子。
電話の向こうで、カオリン、爆笑してるし…。

「…女?」
「そう。吉澤ひとみ 19歳」
「ごめんなさい、私、てっきり男の子かと…」
「いいよ、慣れてるし」

『もしもーし、じゃあ頼んだわよ、こっちも早急に捜すから』

電話の向こうでカオリンがそう叫んで切れた。

 

ウチとその子は顔を見合わせた。

「どうする?」
「どうするって…私、行くところないもん」
「それはウチもだよ」
「…見つかるまででいいんだよね」
「そう、見つかるまで」
「しかたないよね」

ウチはため息をついて、ソファに腰を下ろした。
すると、隣にいたその子は向かい側に逃げていきやがった。
むかつくやつだな、こいつ。

「あのさ、ウチ、名乗ったんだけど」
「あ、ごめんなさい。
私は後藤真希。18歳」
「一個下?」
「85年生まれだけど」
「じゃあタメだ」

同じ年だとわかって、少しだけ笑みを浮かべる後藤さん。
何だ…笑うとかわいいんじゃん。
笑ってればいいのにさ。


「とりあえずウチ、寝るわ」
「へ? 今、朝だけど…」
「ああ、ウチ、宿直明けなの。
だからウチは寝るけど、後藤さんは気にせずに好き勝手やってて」


悪いけど、こんなときは現実逃避しかない。
ウチはソファに転がって眠りに落ちた。

 

つづく

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析