《3》

事務所には中澤さんや圭ちゃんも含めて18人で押しかけた。
さすがの会長もこれには参ったらしく、
ごっちんの一年間休養はすんなりと通った。
休養理由は出産のため。
変に隠したりしても、写真とかとられたりしそうだから
ちゃんと明かすことにした。
でも、相手は明かしていない。
いろんな推測されるよ?って言ったけど
ごっちんは構わないって言った。
「よっすぃ〜がパパですって言って、
よしこが好奇の目にさらされる方がもっと嫌だ」
なんて言ってくれて、ウチは涙が出そうだった。
当然、ごっちんはシングルマザーって言われ方をするはめになった。
もちろんそんな風評は、ごっちんやウチの家族の耳にも入るわけで…。

 

「ねえ、ひとみ、真希ちゃんの話、本当なの?」
「え? あー、うん、ほんと」
「若いのに大変ねえ」

言わなきゃ…

「あのさ、おかあさん」
「なあに?」
「ごっちんのおなかの子、ウチがパパだって言ったらどうする?」
「何言ってんの、あんた女でしょ?」
「でもさ、ウチ、ごっちんを抱いたんだ」
「…何を言い出すの、この子は…」
「そばに…いたいんだ…」
「それならそうと言いなさいよ。
そりゃ親友がそういうことになったらいたいものねえ」
「違う! ずっと…ごっちんと、ごっちんのお腹の中の子のそばにいたいの」

話が全然かみ合わなかった。
お父さんが帰ってきたからもう一度話したけど、同じ調子。


「とにかく、うち、明日からごっちんとこ行くから」
「何を言うんだ」
「今、悪阻でしんどいっていうのに、
今、ウチがそばにいないで誰がいるっていうんだよ」

そして翌日、ウチは家出同然に家を出た。

 

ごっちんの悪阻は結構きつくて
食べては吐きを繰り返していた。
それでなくても細いのに、さらに痩せちゃってみてられなかった。
それでもウチの作ったものなら何とか食べてくれたから、
ウチは毎日仕事から帰ってきてごっちんの夕食を作ったし、
遅くなりそうな日は作っていった。
今まで料理なんて殆んどしたことがないウチが変われば変わるもんだ。
そう話したらごっちんのお義兄さんが
「男なんてみんなそういうもんだ」って笑った。
ってか、ウチ、女なんだけどね。

 

「お疲れ様でしたー」

今日も仕事が終わる。
ごっちんも妊娠五ヶ月の後半に入り、悪阻も落ち着いた。

「もしもし、ウチだけど。
うん…今から帰るからね」

毎日日課となった帰るコール。
電話を切って後ろを振り向くと
梨華ちゃんと矢口さん、辻、加護がにやっって笑ってた。

「いいなあ〜」
「オイラ、羨ましい」
「真希、今から帰るよ」
「待ってるわ、あなた」
「愛してるよ」
「あたしも愛してるわ」

辻加護に至っては、そうとう脚色して
さっきの電話のまねをする。

「なんなの? いったい」
「ごっちん、元気?」
「元気だよ」
「ごっつあん、悪阻落ち着いた?」
「落ち着きました」
「師匠に会いたいなあ」
「……」

ウチが返事をする前に、加護がごっちんに電話をしてた。

「なあ、師匠、会いに行ってええ?
ほんま? やったー! じゃあ行くわ!」

ごっちん、OKしたのね…。

かくしてウチは4人を連れて帰ることとなった。

 

「ごっちん、久し振りー」
「ごっつあん、お腹、目立つようになってきたねえ」
「あはっ、そう?」

ごっちん、久々にみんなに会ってうれしそうだな。

「ご版作ったんだ、みんな食べてくでしょ?」
「ごっちん作ったの?」
「うん。もう悪阻も落ち着いたしさ、
働いてきてくれるよっすい〜にご飯くらい作って上げなきゃ」
「美味しいもん食わせてふとらすなよ〜」
「矢口さん、きっつー」
「それなら大丈夫だよ。よっすぃ〜ね、痩せたの」
「そういや、少し痩せたか? なんで?」
「一緒に悪阻になってたから」
「は?」
「なんかね、旦那さんも悪阻うつっちゃうカップルってたまにいるみたいなの」
「で、よっすぃ〜がそうだったって?」
「そうそう」

矢口さんは爆笑する。
そんなに笑わなくてもいいじゃんかよぅ、わが師匠。

「私が夜中とかトイレで苦しんでてさ、
よっすぃ〜、背中擦ってくれるんだけど、
途中で ごめん、代わって とかいうんだよ」
「よっすぃ〜、サイコー」

みんな、爆笑しなくてもいいじゃんかよぅ。

 

久々のごっちんの料理はやっぱり美味しかった。
みんなが美味しそうに食べるのを見てごっちんも嬉しそうだ。

「あ、私お茶おかわりもって来るね」
「あー真希いいよ。ウチが持ってくる」

その瞬間、4人が新しいおもちゃを見つけたかのようにニヤけた。

「真希だって〜」
「あ…」
「2人の時は”真希”って言うてるんや?」
「わ、悪い?」

ああ、もう…
いやな汗が出るよ。

「悪かないけどさ?
で、ごっつあんはなんて言ってるの?」
「…ひーちゃん…」
「ひーちゃんかよ! 明日から現場でそう呼ぼう!」
「勘弁してくださいよお…」

そのあと、ウチとごっちんが散々からかわれたのは言うまでもない。

 


そして、いよいよごっちんは臨月に入った。


つづく

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