3.

ごっちんと会わなくなって一週間がたった。
会うことはもちろん、電話はおろかメールさえも来なくなった。
ウチのほうからメールしても返ってこない。
元気にしてるのかな…
もう、痛くないのかな…。


「よっすぃ〜」

仕事の空き時間、楽屋でボーっとしてたウチに
梨華ちゃんが声をかけてきた。

「ん? なに?」
「ごっちんね、昨日退院したよ」
「そうなの?」
「うん、会ってきた」
「…元気そうだった?」
「元気だったよ」
「…傷は?」
「……」
「正直に言って? ウチなら大丈夫だから」
「…自分で確かめたほうがいいよ?」
「え、でも…」
「一生会わないつもり?」
「やだよ、そんなの」
「でも今のままだったら一生会えないよ?」

梨華ちゃんは全てを知っていてくれた。
ウチが全てを話して、ごっちんの支えになってあげてほしいって頼んだんだ。
全てを知っていて、敢えて強い口調で梨華ちゃんはウチに言った。

「よっすぃ〜が乗り越えなきゃどうしようもないんだよ?
ショックなのはわかるけど…でもね、ごっちんの気持ちになって考えたことある?」
「ごっちんの…気持ち?」
「ごっちんね、会っててもよっすぃ〜の話ばっかりしてるよ?
大好きなのに、会えないんだよ?」
「うん…ウチ、どうしたらいいんだろう…」
「それは私にはわからないわ。自分で見つけないと…」
「わかんないよ…」
「そんな弱気にならないの! 弱気になってたら、私がごっちんのこと取っちゃうぞ?」
「え…」
「冗談よ。よっすぃ〜、がんばって」


正直、ありがたかった。
梨華ちゃんがウチとごっちんの間にいてくれるだけで
ずいぶんと気が楽だった。

でも…どうしたらいいのかな。
梨華ちゃんの言うとおりだよ。
このままじゃ一生ごっちんに会えない。


そんな時、ごっちんが今後のことの打ち合わせのために
事務所に来るということを小耳に挟んだ。
会わなきゃ…
今、会わなきゃ絶対に後悔する。
発作がおきたってかまわない。
ウチはごっちんに会わなきゃいけない。

ウチは仕事が終わると、事務所へと向かった。
玄関を入ろうとすると、ちょうどごっちんがビルから出てきた。

「ごっちん!」
「あ……よしこ?」

ウチは一歩一歩ごっちんに歩み寄る。

「来ちゃダメ!」
「なんでさ」
「またしんどくなっちゃうよ?」
「別にいいよ」

ウチは、ごっちんと1mというところまで近づいた。

「部屋、貸してもらえますか?」

ごっちんのマネージャーに声をかけた。

 


今、応接室にウチとごっちんは二人きり。
まだ、息苦しくない。…よし。
ウチはごっちんを見る。傷を隠すためもあり、
ごっちんは目深に帽子をかぶっている。
ウチはその帽子をそっとはずした。
あらわになるごっちんの傷。
眉の下辺りに、生々しい縫い後が残っている。

「足は?」
「…見ないほうがいいよ?」
「やだ」
「…わかった」

ごっちんが足の傷を見せてくれる。
こちらも生生しく大きな傷…。

「ごめんね…」

ウチはその傷にそっと触れた。
…徐々に鼓動が早くなってきた。
ウチは大きく深呼吸する。

「大丈夫?」
「うん…」
「発作、でそう?」
「大丈夫」

しっかりしろ! 吉澤ひとみ!!
自分がつけた傷だろ?
お前が逃げててどうするんだ!

ウチはごっちんに一歩近づくと
眉の傷跡にそっと口付けた。

「いたかったよね? ごめんね」
「……大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫」
「私と会ってもなんともない?」
「うん、乗り越えた」
「本当?」
「本当だよ」
「よかった…」

ごっちんの頬を涙が伝う。

「これで…会えるんだよね?
今までどおりになれるんだよね?」
「…いいの?」
「よっすぃ〜、もしかしてまだ自分のせいでとか思ってないよね?」
「……」
「よっすぃ〜のしてること、逆だよ?」
「逆?」
「私はよっすぃ〜のことをどう思ってると思う?」
「自惚れでなければ…好きでいてくれてる?」
「そうだよ? だったら、私はなにを今求めてると思う?」
「……ウチ?」
「そうだよぉ。そばにいてよ…」


ウチはバカかっての…
大きな傷を作って、ショックを受けてないはずがないじゃん…
そんな時、誰かに一緒にいてほしいはずじゃん…
ごっちんのそばにいてやれるのはウチじゃんか…。

「そばに…いていいの?」
「そばにいてよぉ」

ごっちんはウチの胸のなかにとびこんできた。
腕の中で、これから何回も形成手術を受けなければいけないこと
足の方のリハビリをしなければいけないことを話してくれた。

「…嫌いになられたかと思った」
「なんでさ」
「だってこんな傷があったら…」
「ばか、ウチが顔で好きになったって思ってんの?」

いつの間にか、つい最近まで
ごっちんの顔を見るたびに発作を起こしていた事実が
まるで嘘かのように心が落ち着いている自分がいた。

「ねえ」
「なに、よしこ」
「一緒に住もうか」

 


つづく

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