寮に帰ると、吉澤さんはベッドで布団に包まっていた。

「吉澤さん?」
 
返事がない。

「ごはん、行こ?」
「いらない…」
「具合悪いの?」
「食べたくない…」

答えは全て布団の中から。
どうしちゃったんだろう…。気持ち悪いのかなあ…。
私は布団の中に手を入れ、吉澤さんの背中を擦った。
そしたら…
吉澤さんの手が私の手首をぐいっと掴んだ。

「ねえ…それって嫌がらせ?」
「え?…」
「どういうつもりでこういうことするわけ?」

見たこともないようなイラついた顔で、吉澤さんが私を見る。

「ごめん…今日は真希ちゃんの顔見ると、胃、痛くなる…」
「…ごめんなさい…」

吉澤さんに拒絶された…。
転校してきてからずっと「真希ちゃん真希ちゃん」って
私にまとわりついていた吉澤さんに拒否されたわたしはどうしたらいいの?
今の状況で他の誰かと仲良くなるなんて
危険すぎて考えられもしなかったし…。
途方にくれた私は、当てもなく寮を出た。


寮を出たところで、来たばかりのこの街では
私は何も知らないし、何もわからなくて、
学校の近くをウロウロするだけ。
吉澤さんが寝た頃になったら寮に戻ればいいんだ…。

「後藤さん?」

聞きなれた声に顔をあげると、石黒先生が校門のところに立っていた。

「どしたのさ、こんな時間に」
「先生…」

転校してきてからこっちのいろんな出来事に対しての緊張が切れた私は
涙が溢れてきた。

「ちょ…後藤さん?」

石黒先生は私を抱きしめてくれた。
私は先生の胸の中で、ふえーんって子供みたく泣きじゃくる。

「どした? なんかいやなことでもあった?」

泣き疲れた頃に聞いてくれた先生に
私は、転校してきてからの全てを話した。

「へえー、吉澤も初めての病かあ…」
「あ…飯田先輩も同じこと言ってた…」
「え? 圭織も?」
「はい…」
「んで、市井もそれに気付いてライバル心出したってわけか…」

私にはちっともわからない。

「しかしまあ、あのモテ澤くんも、自分の中から初めて起こった感情は
もてあましてるってわけか」

ぷっと吹き出す先生に、
私の頭の中はますます?マークだらけだ。

「あの…」
「まあ、今にわかるって。ってか、後藤さんもかなりの天然だねえ」
「はあ…」
「今すぐ帰っても大丈夫だよ」
「でも…」
「今すぐ帰って普通にしてればいい。
少しくらい冷たくしてやった方がヤツには薬になるかもね」

 

先生と別れて、私は寮に向かった。
部屋に入ると、吉澤さんはベッドの中。
私は彼女を起さないように、自分のベッドに入った。

「…真希ちゃん?」
「ごめん、起した?」
「いや…」

不機嫌そうな声。
私は石黒先生に教えてもらった作戦を試すことにした。

「あのさ、私、市井さんと付き合うことにした」
「だめ!!」

がばっと吉澤さんが起き上がる音がした。
私も慌てて起き上がる。

「…だめ?」

私が聞いたのと、吉澤さんが私を抱きしめたのは殆んど同時だった。

「吉澤さん?」
「…ずっと…出会った日からずっと…こうしたかった…」

吉澤さんは私を包み込むように、優しく抱きしめてくれる。
私は女の人のこういうことされるのは初めてだったけど、
吉澤さんの腕の中はあったかくて、やわっこくて、いい香りがして、
男の人のよりなんだか心地よくて、
私は吉澤さんの背中を抱き返した。

「ウチ…真希ちゃんの事が好きだ…」

 

つづく

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析