寮に帰ってから、吉澤さんは机の前に座ってボーっとしてる。
どうしたんだろう…。
熱でもあるのかな。
そう思った私は、吉澤さんに近づいて
そっと額に手をやった。

「うわっっっ!」

飛び上がらんばかりに驚く吉澤さん。

「あ…ごめんなさい、熱あるのかと思って…」
「…そか…ごめん」
「……しんどいの?」

吉澤さんは首を横に振る。

「大丈夫。先、寝てて?」

本当に大丈夫なのかな…。

 

翌日、私が登校すると市井さんが待っていた。

「あ、おはようございます」
「後藤さん、ちょっと話しあるんだけどいい?」
「…いいですけど…」

校門を入ったところでそう話し込む私達に、周りに人が集まり始めた。

「…どっか行きます?」
「いや、ここでいい」
「…はい」
「あのさ、後藤さん。市井と付き合ってくれないか?」
「…はい? それってどういう意味の付き合うってことですか?」
「もちろん、恋人同士としてだよ」

瞬間、周りの人垣から悲鳴が上がった。
市井さん、絶対確信犯だ…。

結局、私は、返事は曖昧にして、その場を逃れた。
っていうか、ずっと共学で、男のことしか付き合ったことのなかった私には
今の段階で女の子との交際は考えられなかった。
でも、なんとなく、即答で断るのは悪いかなって思ったんだよね。

その日は一日最悪だった。
高橋さんや石川さんは「付き合うって本当ですか?」って
半泣きで聞いてくるし、
矢口さんからは「紗耶香、ぶっ殺す」なんて
物騒なメール来るし。
授業中は偵察を頼まれたのであろうたくさんのクラスメイトから
ノートの切れ端がヤマのように回ってくるし。
吉澤さんはなんかずっと朝から機嫌が悪くて…。
今日はさ、放課後にスキー部に入部届け出しに行くのに
ついてきてもらおうと思ってたのにさ…。
結局、この日は学校中が浮き足立ったまま、
放課後を迎えた。


「あの…」
「ん?」

勇気を出して、私は朝から仏頂面の吉澤さんに声をかけた。

「スキー部の部室に連れて行って欲しいんだけど」
「ああ…、わかった、いいよ」

以外にも、快諾してくれた吉澤さん、
でも、部室までの道では、やっぱり会話がなくて…。
昨日から、なんかおかしいよ…。
大学のキャンパスまでは少し距離があるんだけど、
そこまで歩くとなると、また、私たちは全学園中の見世物になるわけで
居心地が悪い。
誰かと付き合っちゃえばこんな視線にさらされなくてもすむのかな
なんておぼろげに思ったりもするけど…。

「ねえ、吉澤さん」
「なに?」
「いつまでこうやって見られ続けるのかなあ」
「この学園のアイドルであり続ける限りずっとでしょ」
「誰かと付き合えば、追いかけられなくなるかなあ」

私がなにげにいった一言に、
吉澤さんが歩みを止めた。

「……真希ちゃんさあ、市井さんと付き合うの?」
「へ?」
「いや、誰かと付き合うとか言うから…」
「市井さんとは言ってないよ?」
「うん…でも、告られたんでしょう?」
「でも、返事してない」
「うん…」

また、会話が途切れた。

「ここだよ」

クラブハウスの前に着いた。

「おはようございます、失礼します」

吉澤さんがドアをあけると、部長であろう人物が中にいた。

「新入部員連れてきました」
「こんにちは、後藤真希といいます」
「あなたが噂の後藤さんかぁ」

顔をあげると、ニコニコと綺麗な顔の女性が微笑んでいた。

「真希ちゃん、こちらスキー部の主将の飯田さん」
「飯田圭織です。よろしくね」
「じゃあ、ウチ、これで…」
「え? 吉澤さん、帰っちゃうの?」
「うん…ちょっとしんどいし…」

やっぱ、具合悪いんだね?
朝から顔色もよくなかったし…。
元気なく手を振って帰っていく吉澤さんを
私は呆然と見送った。

「よっすぃ〜も初めての病だねえ」

急に飯田さんがそう言った。

「へ?」
「ん? なんでもないよ」

飯田さん、確かにはじめての病って言ったよねえ。
吉澤さん、そんなに酷い病気なのかなあ。


つづく

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