「なんなのよ、あれは」
「ん?」
「吉澤さんのファンでしょ?」
「へ?」
「さっきの子達!って言うか、今日一日ぜーんぶ」
「……真希ちゃん、それって素で言ってる?」
「……うん」

次の瞬間、吉澤さんは爆笑した。

「うちのファンが、真希ちゃんの誕生日なんか聞く?」
「…聞かないよねえ」
「血液型なんて聞く?」
「……聞かない」
「あれねえ、真希ちゃんのファンだよ」
「へ?」

なんとも間抜けな声が出た。

「何で私?」
「かわいいじゃん」
「うそ」
「嘘じゃないって、トップクラスにかわいいよ」
「いやん」
「いやんって、あんた」

吉澤さんが苦笑する。

「それにスタイルいいしさ、足も長い。
運動もできるってなればもてて当然ってこと」
「……まじなの?」
「うん。これで御三家の天下も終わりだぁ」
「まさか…」
「今日の見たらわかんない? ってか、それってまじで言ってる?
天然?」
「……」
「あー、こんなとこ真希ちゃんファンに見つかったら
石投げられるかな」

なんて言ってけらけら笑う吉澤さん。
っていうか、ほんとにほんとに私のファンなわけ?

 

そんな疑問は翌日解消した。
校門を入るとどこからともなく沸いてきた女の子達、
靴箱を開けたらどさどさって落ちてきた手紙の束、

「なんだ? これ…」
「お? すごいねえ、もてもてじゃん?」

声をかけてきたのは市井さんだ。

「はぁ…」
「あの…」

私が途方にくれていると声をかけてきたのは
同じクラスの石川さんだった。

「はい?」
「あの…お弁当作ってきたんだけど、食べてもらえますか?」

そう言って石川さんはピンクのハートのバンダナでくるんだ
弁当箱を私に差し出した。

「あ…ありがとう…」

私が受け取ると、石川さんはほほを真っ赤に染めて走り去っていく。

「あー、これで弁当係りは決まりだね」
「へ?」
「一番最初に弁当を受け取ってもらえた子が弁当係りに決定、
これ暗黙の了解ね」

市井さんが教えてくれた。

私は前の学校でももてたことはモテた。
でもそれは相手が男の子だったわけで
どっちかっていうと女の子には嫌われてるっぽかったし
だから、何で自分がこんなに女の子にモテるかなんて
わからなかった。

「げ、市井が一緒?」

そんな声に私は顔をあげる。
今度は金髪のちっちゃい女の子が私を見てた。

「なんだ、矢口かよ」

市井さんの知り合いかなあ。

「オイラ、後藤さんに用があるの」

そう言って矢口さんって呼ばれたその人は私に近づいてきた。

「オイラ、これとは幼稚園の時からの腐れ縁の矢口真里っていうんだけど
もしよかったらメアド教えて欲しいな」
「あ、はい…いいですよ」
「矢口がメアドゲット第一号かよ!」


こんな感じで私に関する事が全て争奪戦となった。
昼休みになると、誰が一緒にお昼を食べるか争奪戦が勃発し、
それには一年後輩の高橋って子が一番乗りして
勝利した。
こんな感じで放課後になるころには私は疲れ果てていて、
下校途中に吉澤さんを見つけて駆け寄った。

「吉澤さ〜ん」

私は情けない声を出して彼女の背中にピトってくっついた。

「うわ、びびった」

吉澤さんのこと、第一印象ですっげえいやなやつって思ってたけど
今は、モテ状態を理解してくれる同じ年の同士って感じで
親近感が起こるから、人間って勝手だ。

「ファンに見られたら怒られるよ」

そう言って私を引き剥がす吉澤さんはなんか怒ってる風で、
私何かしたのかなあ
そう思うと、かなり寂しくなった。

「ごめん…先、帰るね」

トボトボと私が歩き出すと

「あー、ちょっとまって」

吉澤さんが追いかけてきてくれた。

「同じとこ帰んだから、一緒に帰ろう」

そう言って私と並んで歩き始める。
でも、会話はいっこもなくて
吉澤さんはなんかため息ばっかりついてて
今まで―って言ってもまだ三日目なんだけど
今までに見たこともないような暗い顔をしてた。

「…どうかした?」
「え? あ、なんでもないよ」

途端に作り笑顔満開になる吉澤さん。

「あ、そだ、クラブ決めた?」
「え? でも私達高3だし」
「あー、ウチらの学校ってエスカレーターで受験ないじゃん?
だから、高校のクラブ引退したら、次は大学部のクラブに所属するんだ」
「そうなんだ…」
「前の学校でクラブやってた?」
「ううん」
「そっか、じゃあ、なんか入るといいよ。楽しいから」
「吉澤さんは?」
「ウチ? ウチはスキー部、冬以外は筋トレばっかりでジミだけどね」
「じゃあ、私もスキー部はいる」
「へ?」

今の状態で、吉澤さんのいないところに飛び込んでいくのは怖かった。

「だって、今の状態で誰もいないとこはいるの怖いもん」
「ハハ、滑れんの?」
「スノボしか出来ない…」
「じゃあボードチームに所属すればいいよ。
明日、部室に連れてってあげる」

そう言った吉澤さんは、少しだけ、いつもの明るい笑顔に戻っていた。


つづく

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