《2》

富樫に案内された湯原とひとみは歩きながら会話を交わす。

「この春入隊してきたばかりな隊員なんですが
身体能力、運動能力ともに優れてましてね。
加速Gへの耐性という意味でも、
訓練を積んだ隊員より優れてるくらいなんです。
私としてはそいつを推薦したいんですが」
「ほう、それは興味深いですね」

富樫と湯原の会話を聞きながら、
ひとみは自分の機龍をオペレートしてくれる人物が誰になるのか
内心ワクワクしていた。

「今、戦闘機の訓練に行ってまして、
もうすぐ戻ってくると思います」

その言葉と前後して、2台のバイクが目の前に停まった。

「おはようございます」

そのうちの一人、家城がヘルメットを脱ぎながら
湯原とひとみに挨拶する。
少し遅れてもう一人がヘルメットを脱いだ。
パラッと茶色の長い髪が落ちる。

「あの子…っすか?」

ひとみが聞く。
その子はひとみよりも少し背が低く、
華奢で抜群のスタイルのかわいい顔をした少女だった。

「後藤、こちら機龍開発班の湯原博士と吉澤さんだ」
「おはようございます。後藤と申します」

後藤―後藤真希は姿勢を整え、2人に敬礼した。

 

その後、湯原とひとみは真希の訓練を見学することにした。

「彼女、いくつなんですか?」
「18です」

湯原の質問に富樫が答える。

「タメだ…」

思わずひとみが呟く。

「あいつはスーパー18歳ですよ。
まあ見ててください」

富樫が自信ありげに微笑んだ。


ランニング、筋トレなどの基礎訓練から訓練は始まる。
基礎訓練においては、
TOPクラスの実力を誇る先輩隊員に引けを取らない実力で
真希はそれらをこなしていく。
長い髪を後ろで一つに束ね、もくもくと訓練をこなしていく様は
もはや中堅クラスの貫禄さえ醸し出していた。

昼休み―。

「午後からの訓練って何するんですか?」

湯原とひとみが昼食を摂りながら話していた。

「機龍隊特有の訓練らしいよ。
加速Gとか、熱線に対しての耐性訓練とか」
「なんかすごそうっすね」
「まあな。それくらいしないとゴジラとは戦えないってことだろう」

ひとみがふと目を向けると
窓際の席で真希が食事をしていた。

「こんちは」

ひとみは思わず近寄り話し掛けていた。
真希は視線を上げ、ひとみに会釈する。

「…食事、これだけ?」

真希が食べていたのはサラダとコーヒーのみ。

「ええ。あんまり食べると午後からの訓練に差し支えるんで」
「そうなの? 食べない方が力出ないんじゃないの?」
「そうなんですけど、満腹でやると吐いちゃうんで。
訓練終わったら食べますから」

そんな真希の発言への、ひとみの疑問は
午後かの訓練を目の当たりにして解消した。


「すげ…」

目の前で行われているのは
椅子を四方八方に振り回す平衡感覚の強化訓練。
そして次に切り替わった画面では
摂氏90〜100度に加熱されたコックピット内で
正しい操作を行う訓練。
ひとみはもう、唖然とその様子を見守るしかなかった。

「あの…」

訓練を見学し終わったひとみが口を開いた。

「なんでしょうか」
「彼女に…後藤隊員に会えますか?」
「はい、いいですよ。
女子更衣室にいると思います」

ひとみはたった今、目の当たりにした自分と同じ年の真希の
すさまじいまでの訓練に圧倒されていた。
この子になら自分の機龍を完璧に操れる、
確信めいた気持ちもあって、ひとみは更衣室のドアをノックした。
返事は返ってこない。

「入りますよ」

ドアをあけると、部屋の奥で真希が座り込んでいた。

「…後藤さん?」

真希は訓練服を上半身だけ脱ぎ、肩で息をしながら
うつろな目で座り込んでいた。

「…水…」
「水?」

ペットボトルに入った水は、真希から2mくらい離れた机の上に置いてある。
どうやら真希はその距離も動けないらしかった。
ひとみは水を取ってやり、口元に持っていく。

「…違う…頭から…かけて」
「わかった…」

ひとみが水をかけてやると、
真希は懸命に呼吸を整えようとする。
気がついたひとみが近くにあった酸素スプレーを
真希の口にあててやった。

「ありがと…」
「大丈夫?」
「耐熱訓練のあとは…いつもこうだから…」

そう言いながら真希は、出会って初めての笑顔をひとみに向けた。


つづく

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