<第4蹴目>
まさかと思った。
そりゃあね、大阪大会の疲れが残ってて
筋肉の張りとかあったことは確かだけど
まさか第一競技で足をいためるとは思ってもみなかった。
走ってる途中から違和感があって
最後は流して走っちゃったけど、
ゴールをしてからも違和感は拭えなくて
あたしはそのまま医務室へ直行した。

「あ〜、軽い肉離れだねえ」

ドクターは軽く言ってくれるけど
ちょっと待ってよ、フットサルはどうなるの?

「出れます? フットサル、出れます?」
「テーピングしたら出れないことはないけど
そのかわりそれまでの競技、全部休んでもらえますか?」
「わかりました…」

悔しいけどしょうがない。
今まで頑張ってきたフットサルに出れないのはもっと悔しいから
あたしはフットサルに合わせて治療を受けることにした。

治療を受けながらモニターに目をやる。
なんかさ、続々と医務室に来るメンバーが多くて
わがオレンジチームはぼろぼろだ。
そんな中、孤軍奮闘でごっちんが頑張ってるけど
ごっちん、こういう状態になったら頑張りすぎちゃうからな…
大丈夫かな…


フットサルが近づき、あたしはベンチに帰る。
心配そうな顔したごっちんがあたしに話し掛けてきた。

「よしこ…」
「大丈夫」

あたしは自分が一番最高だと思う笑顔でごっちんに応えた。
まだ心配そうにあたしを見てるけど
ここはもう、フットサルで動いて納得してもらうしかない。

 


そしてフットサルが始まった。
やっぱり動くと違和感がある。痛みもある。
それでも足を引きずりながらでも走るしかなかった。
こんな状態じゃフル出場は無理だけど
ピッチに立ってる時間は頑張るしかない。

そして、何とか得点できた。
梨華ちゃん
そしてあさみのシュート。
あたしはごっちんと抱き合った。
あたしのシュートでも、ごっちんのシュートでもないけど
とにかく得点できたことには違いないから。


試合終了の笛が鳴る。
ごっちんが足を引きずっている。
大丈夫かな…。
ごっちんは次の60m決勝に出るべくスタンバイに向かう。
棄権すりゃいいのに…。
あたしは切ない思いでごっちんの後姿を見送った。

ベンチの前においてあるモニターで決勝をじっと見入る。
ごっちんはすごくがんばっている。
あの細っこい身体のどこにあんなスタミナがあるんだろう。
全力疾走だ。
ののについでの二位。
だけど…ゴールに駆け込んだ瞬間、ごっちんの顔が苦痛でゆがんだ。

「あ!!」

思わず声を上げてしまった。

ごっちんはゴールした瞬間に、その場に座り込んでしまった。
立てない。
スタッフが駆け寄る。
嘘だろ? 
スタッフが肩を貸して歩こうとするが無理みたい。
途中からスタッフに担がれて退場口へ運ばれた。

大丈夫なのかな…
先週のののとか安倍さんの姿が頭をよぎる。

「行っていいよ」
「え?」

矢口さんがそう言った。

「気になるんだろ? 行っていいよ」
「…でも…」
「いいから、ちゃっちゃと行く!」
「はい!」

ありがとう、矢口さん。
あたしは矢口さんに後押しされて
さっきグラウンドに戻ってきたばっかりだというのに
また舞台裏へと引き返した。
ファンのみんな、ごめんね。
でもごっちんほっとけない。

「真希ちゃん、大丈夫?」
「うん」

突然現れたあたしにびっくりしながらごっちんが答えた。でもそう言いながらもごっちんの額には脂汗が浮かんでて
相当痛いんだと思う。
あたしはドクターがごっちんを診察するのを隣りで見てた。

「完全に肉離れだねえ、これ」
「踊れます?」

すぐに仕事のことを聞くところはごっちんらしい。

「テーピングすれば踊れないことはないけど、痛いよ?」
「それは構いません」
「わかりました。じゃ早急に応急処置しますね」

アイシングとかマッサージとか、
ごっちんは今出来る限りの治療を大急ぎで受ける。
やっぱり、怪我をしたてで痛みがまだかなりあるせいか
処置をしてもらうのにもごっちんの顔が痛みで歪む。

「よしこ…出ていかなくていいの?」
「うん、いい」

グラウンドではリレーが終わり、表彰式も始まっていた。
でも、こんなごっちん置いていくのはいやだ。

「仕事でしょ?」
「やなもんはやなの」

どうせ出番はないんだし。
なんて言うと、他の怪我を押して表に帰ってるメンバーはどうなんだって
話なんだけど。
でも今のあたしは無理。

「あの…痛み止め打ってもらえませんか?」

ごっちんが言う。
ごっちん、どうしてもライブで踊る気らしい。
本当はこういうのをプロっていうんだろうね。
あたしなんて引き続き、表彰式もブッチしちゃったし。
患部に直接注射してもらうごっちん
見てるあたしの方が痛いや…

「よしこったら、自分が注射されてるみたい」
「ハハ…そんななさけない顔してる?」
「うん」
「だって痛そうだもん。真希ちゃんさ、踊る気?」
「うん。派手に行くべ、なのに派手にいけないしさ、今のままじゃ」

結局、ごっちんにあわせて、最後まであたし出ていかなかったよ…

「ありがとうね」

ライブの着替えに戻るとき、ごっちんがそう言った。

「え?」
「一緒にいてくれてありがとう。おかげで元気になった」

そう言ってVサインをするごっちんだけど
足は微妙に引きずっていて…。
あたしたちは手を繋いでお互いに足を引きずりながら、着替えに向かった。


今日の試合は点を取れた以外は最悪で…
また、今度は万全な体調の時に試合をさせて欲しい。
じゃないと不完全燃焼だよ…
お願いしますよ?

 

「うち、来る?」
「ん?」
「ほら、ここからだと家、近いしさ」
「うん、行く」

最後はぼろぼろの身体を引きずって
あたしはごっちんの移動車に乗り込んだ。

「寝てていいよ?」
「ん…」

自分の方が怪我は酷いくせに
そうやってあたしに気を使うごっちん。
ごめんね、そしてありがとう。

FIN

あとがき
ファンも不完全燃焼です。
せめて大阪程度の試合をさせてあげたかった。
きっとよっすぃ〜、顔では喜んでても自分的には悔しかったんじゃないかと…
どこかでリベンジさせてあげて欲しいですね

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