第一蹴目

「よっすぃ〜、起きて」

ごっちんの声がする。

「ん…」

重いまぶたを上げると目の前に飛び込む
ごっちんの笑顔。
あたしよりごっちんのほうが早く起きるなんてめったに無いんだけどね。
最近はフットサルの朝練の前の日はごっちんの家に泊まるから
その日だけはいつもごっちんが早く起きて朝ごはんを作ってくれるんだ。
毎回毎回、「真希が早起きしてご飯作るなんて雨が降る」って
お母さんに言われて、むくれながらも
ごっちんはバランスのいい朝食を作ってくれるんだ。
まだ目が覚めきらなくてふにゅふにゅしながら椅子に座ってると
頭を優しく撫でてくれるのも気持ちいい。

「目、覚めた？」
「うん」
「じゃあ、早く食べちゃお？　マネージャーさん、来ちゃう」

そういえば、最初の練習の日は
ごっちんのマネージャーさんが迎えに来て
あたしも一緒に出て行ったら
「あれ？　何で吉澤ここにいるの？」って驚かれたっけ。
でも今じゃ、吉澤がいると、朝早くても後藤の機嫌がいい
なんて感謝されてる。

朝練は、全員がそろうことなんて全く無いんだけれど
カントリーの3人とか、加護とか梨華ちゃん、矢口さん
ごっちん的「好きなメンツ」が比較的出席してるから
これもごっちんが朝練を楽しみにする所以かな。

あたしはというともともと身体を動かすことが大好きで
こういう競技は燃えるタイプ。
マジになったあたしにはハロプロ内には敵は無い。
やっぱさ、こういうのって真剣にやらないと
競技認定してくれたサッカー協会の人にも悪いし
見に来てくれるファンのみんなにも悪いと思うから。
それにやっぱりあたし的にはごっちんがいることも大きい。
同じピッチ内にごっちんがいると俄然張り切っちゃって、
ゴールを決めたときに抱きつきに来てくれるのがひそかに楽しみだったりして。
はっきり言ってレギュラーになれるかどうかはわからない。
本当にガチで勝負させてくれるのか、
「絵になる」選抜をするのか。
やっぱさ、夢は「ドーム」で「ごっちんとピッチにたって」
「シュートを決めて」「ごっちんと抱き合う」こと。
ファンの人に
「ま〜た吉澤と後藤、一緒にいるよ」って言われてもこの際いい。

「今日もよっすぃ〜かっこよかった」

更衣室でそうごっちんに言われて、テレかくしにＶサインしてみた。

「一緒にピッチに立とうね」
「うん、がんばろ」

ゴールへの夢はまだ始まったばかり。

つづく

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