<プロローグ>

「はあ? お母さん、それまじで言ってるの?」
「ええ、まじめよ」
「そんなん、入門者集まるわけないじゃん」

私の名前は後藤真希。
私の家は後藤ジムって言うボクシングジムをやっている。
当然、お父さんは元プロボクサーで。
でも突然に失踪した。
残されたのはジムとたくさんの入門者。
廃業するって話もあったんだけど、ボクサーたちの希望で存続が決定。
幸いなことに優秀なトレーナーは全員残ってくれたので
大勢に影響はない。
そして今回、お母さんがとんでもないことを言い出した。

『女子ボクサーの養成』

これはお父さんの夢でもあったんだけど…。
最近になってボクシング界にも女子選手が増えてきて
協会の役員を務めるお父さんのジムとしても
養成に乗り出すって言う話らしかった。
それがお父さんの失踪で暗礁に乗り上げてたんだけど
今回、母さんが跡を継いで、本格的に乗り出すらしい。
で、その女子選手を担当するのがこの私。
いくらトレーナーの勉強してるといっても
所詮17歳。
なのに、ジムの皆から推されてやることになってしまった。
”真希ちゃんには人を惹きつけるカリスマ性がある”
なんておだてられて。てか、芸能界じゃないんだから
カリスマ性ってそもそも必要あんの?

まあ17歳のトレーナー見習が率いるジムの女子部門なんかに
入門者なんて来ないよね。
私は私で今までどおり気楽にジムで勉強すればいいんだ。
今日も事務所で私はパソコン相手に座学に励む。

「真希ちゃん。入門者だよ」

突然に響く声。

………え? まじっすか??

慌ててジムへ出ると、
そこには私より少し背の高い、目の大きな
少年っぽい女の子。

「吉澤さん、この人があなたの担当になる後藤真希さん」

チーフトレーナーの川島さんが私をその子に紹介する。

「はじめまして、吉澤ひとみ、17歳です」
「あ…タメじゃん…」
「本当?……ですか?」
「いいよ、タメ口で。タメなのに敬語使われるとやりにくい」
「あ、はい…」
「じゃあ、真希ちゃん、後はよろしく頼むね」

とりあえず私は、その子…吉澤さんを事務所に連れて行き、
いろんなことを教えることからはじめることにした。

「ねえ」
「はい?」
「何でボクシングなの?」
「好きだから…」
「顔、腫れたりするよ? かわいい顔してるのにもったいない」

こうやってまじまじ見ると、本当に惚れ惚れするほど整った顔。
正直、ボクシングで殴りあうにはもったいない。

「顔のよしあしなんていいの。強くなりたい」
「そう。で、なんでウチ選んだの? こんな若僧がトレーナにつくようなジムだよ?」
「会長のファンだったの、ウチの父が。で、ビデオとかいっぱい見せられて。
知らない間に私も後藤会長のファンになってて」
「へー。若いのに珍しい」
「えっと…後藤さんは…会長の…」
「娘」
「そうなんですか! うわ―感激だ」
「オヤジはオヤジ、私は私だよ? 私はリングに上がらないんだし」
「ボクシングはしないの?」
「昔はしてた。って言っても学校のボクシング部だけどね」
「今は?」
「…いいじゃん、その話は。今はもう私、選手じゃないんだし。
で、吉澤さん、学校は?」
「行ってます」
「じゃあ、とりあえず暫くの間は放課後に通ってきて?」
「朝のランニングとかはやらなくていいの?」
「今はどうしてんの?」
「走ってる」
「じゃあ、続けて」
「はい」

とりあえずは…素直そうな子でよかった。
見た目が茶髪で、顔が整ってる分
怖く見えたんだけど。

こうして、新米トレーナーの私と、プロボクサーを目指す吉澤ひとみの
物語が幕を開けた。

つづく

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析