《7》

ウチは疲れきった体を引きずり自宅へ帰る。
家の電気は消えていて、
ああ。今日はみんな親戚の家に行くって言ってたっけって思い出す。
ちょうどよかった。
今は、誰ともしゃべるのは億劫だった。
マンションのオートロックを開けようとしたら、
後ろから名前を呼ばれた。

「よっすぃ〜」
「……ごっちん?」

振り返ると、ごっちんが切なげな表情で微笑んでいた。

「…どうしたの?」
「会いたかった…」
「……」
「…なんて、都合がよすぎるよね…
ごめん、帰るね…」

そのまま,踵を返して帰ろうとするごっちんの腕を
ウチはぐいっと引っ張り抱き寄せた。
たしかに、ごっちんのやってることはウチから見れば
最低かもしれない。
でも、こんなはかなげな表情を浮かべるごっちんを帰せるかっての…。

「家、入ろ?」
「うん…ありがと…」

 

家に入ったごっちんは所在なさげにウチの部屋に入ったところで突っ立っている。

「すわんなよ」
「うん…」

ベッドにもたれて腰を下ろしたごっちんの隣にウチも座った。

「ごっちん…」
「ごめんね、よしこ、ごめんね」
「なにが?」
「私、よしこにすっごいつらい思いさせてるよね?」
「……」
「…捨てられても仕方ないって思ってる…」
「ごっちん?」
「捨ててくれていいんだよ?」
「バカ真希!」
「へ?…」
「だれがいつ、ごっちんのこと嫌いになったって言った?
誰が捨てるって言ったよ。
確かに今の状況はすっごいつらいさ、
でも耐えていけるのは…
耐えていけるのはごっちんのこと大事に思ってるからじゃん」

一気にまくし立てるウチの顔を、
ごっちんがじっと見ている。
その瞳にじわっと涙が溢れてくる。

「…好きでいていいの?」
「うん。…ってか、好きでいてください。
じゃなきゃウチ、生きていけない」

ウチはそっとごっちんの唇を指でなぞった。
もう、何日もキスしてない。
もう、何日も抱き合ってない。
もう、何日も…。

「キスして…いい?」

返事の代わりにごっちんは目を閉じた。
ウチはその唇に自分の唇をそっと重ねる。
久しぶりのその感覚は、頭の中までしびれそうだった。
お互いに唇を離せない。
貪るように、お互いの唇を求める。
いつしかフローリングの床に倒れこみ、
上になり下になり、それでもキスを止めない。
唇を離したのは、いい加減息苦しくなってから。
二人の肩が上下する。

「最高…」
「私も…。私をこんな風にできるのはよしこだけだよ?」
「ほんと?」

それは最高のほめ言葉。

「いちーちゃんとは何にもなかったもん」
「そうなの?」

驚いて身体を起こしたほど意外な言葉。

「意外だった?」
「うん…」
「だってさ、いちーちゃんと一緒にいたのって
13とか14のころだよ?」
「言われてみれば…」
「だからね、私にこんなことできるのってよしこだけなんだよ?」

そんな言葉を耳元で言われて、
ウチの身体は芯からしびれる。

「ごっちん」
「なあに?」
「しよ?」
「フフ…エロよしこ」

朝まで、ウチらは抱き合って過ごした。
ごっちんからパワーをもらうために。
ごっちんが市井さんとずっといても
それを笑って見過ごせるだけのパワーをもらうために。

もう怖くない。
市井さん、どんとかかって来い!

 

 


つづく

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析