《5》

ごっちんが壊れた。

それもウチの目の前で。

ごっちんが倒れていくのがまるでスローモーションのようだった。

すぐ後ろを歩いていたウチが抱きとめたから、
倒れた拍子にどこかを強打するということはなかったんだけど
抱きとめたごっちんは顔面蒼白だった。

「圭ちゃん! あやっぺさん!」

先を歩いていた他のメンバーを、ウチは夢中で呼んだ。
ウチの叫び声に、圭ちゃん、あやっぺさん、市井さん
そしてスタッフがあわてて戻ってきた。
ウチの腕の中で苦しそうに顔をしかめるごっちんを見て
みんなが焦る。

「貧血…起こした?」
「おそらくそうかと…」
「タクシー呼ぶから病院連れて行こう」

スタッフが携帯で電話をする。
ウチはゆっくりと、ごっちんに負担がかからないように
ごっちんを抱き上げた。
その軽さに愕然とする。
ソロで苦労してるんだろな…。
そのときは漠然とそう思ってた。
ウチはごっちんを抱き上げて玄関まで連れて行く。

5分ほどしてタクシーが来る。

「ウチ、付いていきます」
「吉澤…」
「行かせてください」

有無をも言わせぬ強い口調のウチに
スタッフもわかったとだけつぶやいた。

 

 

病院についてわかったこと。
ごっちんは過度の睡眠不足と、栄養不良だった。
なんで?
うちの頭の中には?がいっぱい浮かぶ。
あんなによく寝る子が…
あんなによく食べる子が…

その日、一日入院をすることになったごっちんに
ウチは付いてることにした。
帰りなさいって言うスタッフに
うちは「帰りません、付いてます」っていって聞かなかった。
最後にはスタッフもあきらめて
おまえまで倒れたらしゃれにならないからちゃんと寝るんだぞ
とだけ言い残して帰っていった。

 

暫くして、点滴で少しは気分が楽になったのか
ごっちんが目を開いた。

「…よすぃこ?」
「ごっちん、大丈夫?」
「うん、だいぶ楽になった」

そういってウチに笑顔を向けてくれるごっちん。
ウチもつられて笑顔になる。

「やっと笑ってくれた」
「へ?」
「最近のよしこってさ、目が合っても逸らしちゃうし
笑ってくれないし…寂しかったんだよ?」
「…そう? 気のせいじゃない?」

気のせいなんかじゃないさ、
ウチが意識的にごっちんを避けてた。
ウチより市井さんを選んだごっちんを…。

「気のせいなんかじゃないよ。だって私、すっごい寂しかったんだもん。
だから、一緒にご飯とか食べにいこうって誘ったのに
あんななっちゃうし…」
「ああ…ごめん、迷惑かけて」
「ううん、迷惑だなんて思ってないよ?」
「思ってない?」
「うん…。だってよしこの世話やくの楽しいし」
「でも…」
「ん?」
「でもウチ、あのときすっごい酷いこと言ったよ?」
「…そうだね。悲しかった」
「……」
「眠れなくて…ご飯も全然おいしくなくなっちゃって…
挙句にこの様。プロ失格だね」

自嘲気味に笑うごっちん。
ウチがそばにいちゃいけないんだって思った。
そばにいるべきなのはあの人だよね?
なのに、何でウチがついてきちゃったんだろ…。
ウチは勢いで付いて来たことを後悔した。

「…帰るよ」
「え…」
「…市井さん呼んだほうがいいよね?」
「はあ?……それ、本気で言ってるの?」
「だって、ごっちん全然ウチとしゃべってくれないじゃん!」
「よしこならわかってくれると思ってたのに…」
「え…」
「もう…いい…」

こんなにしょげたごっちんを見るのは初めてだった。
ここにこれ以上いたら、ごっちんの具合がもっと悪くなる。
ウチは立ち上がった。

「帰るね…」

不意に強い力で腕を捕まれた。

「バカよしこ!!」
「ごっちん」
「言わなきゃわかんないの?」
「うん…馬鹿でゴメンね?」
「私がそばにいて欲しいのはよしこだよ?」
「でも…」
「いちーちゃんといるのは頼まれたから」
「頼まれたから?」
「そう。よしこと私が一緒にいるところを見ると
いちーちゃんが怒るから」
「はあ?」
「だからいちーちゃん、ミスばっかりしてた」
「…そんな…」
「そしたらウチの立場は!っていいたいよね…。ゴメンね」


ごっちんがたまらなくいとおしくて
でもなんかめっちゃくちゃ切なくて
…ウチはどうしたらいいの?
誰か助けてよ……。

 

つづく

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