「は?」
「抱いてって言ったの」
「抱くって…抱いてるやん、今」
「違う。抱くってのは、深い意味のほうの抱く、だよ」
「あんた何言うてんの? 冗談はやめてえな」
本当は冗談なんかやないってことくらい
ごっちんの目見たらわかる。
でも、そんな返し方しか今のあたしにはできん。
「冗談なんかじゃないよ?
抱いてよ。キスしてよ」
「…抱いてやることは簡単やで?」
「じゃあ早く」
「でも、よっさん裏切ることになるんやで?
浮気になるんやで?」
「わかってる…」
「わかってて…抱かれるんか?」
「怖いの、裕ちゃん。
今日は誰かのぬくもり感じたいの」
「よっさんに言いいや」
ごっちんは首を横に振る。
「わたし胃がんなの、なんて言えるわけない」
「なんでえな。早期だから治るって言うてたやん」
「そりゃ今は治るかもしれない。
でも、転移とかしてたりするかもしれないし
再発の恐怖とずっと戦わなきゃいけないんだよ?
よしこは優しいから、そんな私といたら
きっと自分のことそっちのけで私の世話焼いちゃうと思う。
そんなの、よしこの幸せじゃない…」
「わかった。ほんまに後悔せえへんねんな?」
「うん…」
よっすぃ〜とごっちんがお互いに思いあってるのが痛いくらいにわかる。
だから離れなきゃいけないって決めたごっちんの気持ちもよくわかる。
でも、よっすぃ〜の気持ちはどうなるんや?
今はごっちんはそんな話をできる状態じゃない。
今、あたしがしてやれること、
それは目の前のごっちんが望むように抱いてあげることなんかもしれん。
倫理に反してることはわかってる。
でも、今のごっちんはあたしを求めてる。
全身であたしを求めてる。
そんなごっちんを放っておいとけるわけあらへん。
ごめんな、よっすぃ〜。
あたし、今からごっちんのこと、体で慰めるわ。
あたしはごっちんを抱いた。
いっぱいキスをして
いっぱい身体を重ねた。
「裕…ちゃん…ぁん…」
「気持ちいい?」
「うん…最高…ん…あぁ…イキそう…」
「一緒にイコうな」
ごっちんは泣いていた。
あたしも泣いた。
神様、何であなたはこの17歳の少女に試練を与えるのですか?
今、ごっちんはあたしの腕の中で眠る。
痩せたほほのラインを指でなぞると
くすぐったそうに微笑む。
なあ、ごっちん。
隠し通すなんて、無理やで?
ただ、どうやってよっすぃ〜に言うのかは考えなあかんやろけど。
あたしは、携帯を取り出してある人物に電話をした。
「もしもし? うん、裕ちゃんや」
『おお〜、裕ちゃん、久しぶりだね、どうしたの』
「あんな、ちょっとごっちん預かってほしいんやけど」
『ごっちん? またなんで?』
あたしは電話の相手―、あやっぺにすべてを話した。
あやっぺは電話の向こうでないていた。
在籍してたとき、あやっぺはごっちんのことかわいがってたからむりもないやろ。
「とにかくな、ちょっと今後のこと考えたいんや。
だから一人になる時間がほしいんやけど、
今のごっちんひとりにはしとけんからな」
『うん、わかった、連れてきて。
玲夢もいるし気もまぎれるだろうし』
「それでな、あの…」
『よっすぃ〜? 連れてきていいよ。
ちょっと二人のこと観察してみるよ』
「悪いな、頼むわ」
『任しときなって。私は裕ちゃんのナイスバディだもん』
翌朝、目を覚ましたごっちんは、
幸いにも今日の仕事は夕方かららしく
ゆっくりできるという。
「あんな、あやっぺのとこ行ってくれへんか?」
「あやっぺのとこ?」
「うん。ちょお裕ちゃん用事あってな、
ごっちん一人にするの気が引けるから
あやっぺに頼んだんや」
「全部…話したの?」
「話した」
「そっか…」
「ごめんな」
「ううんいいよ、あやっぺならいい」
「でさ…よっさん連れてきてええかな」
「だめだよぉ」
「言うわけやないで?あのさ、吉澤が
最近仕事休みがちのごっちんのこと気にしてたって聞いたから」
これは事実。
矢口とかからメールをもらって知ってたんや。
「わかった…。でも言わないよ?」
「うん、わかってる。ゆうちゃんな、ちょっとええ手考えてみるわ」
「ごめんね?」
「ううん、ええよ。乗りかかった船や、最後まで乗ったる」
「ありがとう…」
何としてでも、この人懐っこい笑顔を守りたい。
見てるだけで癒される、吉澤後藤のカップルをずっと見てたいんや。
だから、あたしは二人を守るんや。
つづく
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