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ＳＩＤＥ　ＨＩＴＯＭＩ

「吉澤、ちょっと」

仕事が終わった後に、スタッフに呼ばれる。

「はい」

会議室に呼ばれたあたしに、スタッフが真剣な顔で用件を告げる。

「明日発売の写真週刊誌に、おまえのスキャンダルが載る」
「へ？　あたしですか？」
「そうだ。男の家に入っていくところと、デート現場を撮られたんだ」

…え？　全然身に覚えがない。

「…相手、誰ですか？」
「後藤祐樹」
「……はあ？？？」

それ男の家に行ってるんじゃない、ごっちんの家に帰ってるんだ。
デートって、この前、海につれてってもらったときじゃん。
あれ、一回こっきりだし。

週刊誌に載るって言う写真を見せてもらった。
…確かにキャプションのつけ方ひとつでは
あたしが祐樹と付き合ってるって取れなくもない。

「祐樹とつきあってるのか？」
「まさか」
「付き合ってないんだな？」
「はい。ただの友達…ってかごっちんの弟としての付き合いですよ」
「そうか。じゃあそうコメント出しておくから」

そうスタッフは言ってくれた。
はあ…ごっちんにどうやって説明しようか。

あたしは写真のコピーをもらい家路を急ぐ。
気が重いな…。
このまえ、ごっちんと一緒に生きて行こうねって決めたばっかりなのに。
こんなスキャンダル、いやだよ…。

「ただいま…」
「お帰り…って、どうかした？」

ごっちんはあたしの微妙なテンションの違いを読み取って
心配そうに顔を覗き込む。

「ごっちん、ごめん」
「え？」
「写真撮られちゃった」
「写真？」
「うん。明日発売の週刊誌に載る」
「…どういうこと？」
「これ…」

あたしはもらってきたコピーをごっちんに見せる。

「もちろん、まったくのデマだよ？
そうコメントも発表した。でも…ごめんね？」
「あやまることじゃないじゃん」
「でも…」
「いろんなこといわれて傷つくのはよっすぃ〜じゃん。
でも、私が守ってあげるから安心して？」
「うん…」

そして翌日、あたしと祐樹のでっち上げ恋人記事が写真週刊誌に掲載された。
トップアイドルモーニング娘。のメンバーの恋愛ネタ。
恰好のワイドショーネタだ。
しかも相手は後藤真希の弟だ。
どの局も面白おかしく解説してやがる。
インターネットのサイトでもあたしと祐樹のことがネタとして扱われる。
家でネットして軽く落ち込んだ。
それよりも実家から電話がかかってきて怒られた。
あんたは男と付き合うために後藤家に居候させてもらってるのか　と。
もう…言うしかない。
あたしは自分の家族を後藤家に呼んだ。
すべて話そう。
そして理解してもらって
これから先の人生をごっちんのために生きていくって言おう。

　つづく

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