■3 「司る者」
翌日の朝。
少しどんよりとした空模様だった。
レオンが目を覚まし起きあがると、空華が刀の手入れをしているのが見えた。
傍で見物しようと立った。
「起きるの早いね、空華は」
「私の何倍も早起きのやつがいるぞ」
足に押されるような感触があった。
足下を見ると、ラーヴ達が体をすり寄せていた。
「気に入られたようだな、レオン」
確かに、昨日よりもなついている感じがした。
と、ふいに何かいい匂いが鼻をついた。
「朝食が出来ている。食べ終わったらすぐに出発しよう」
スープの様なものをすすりながら、昨日の夜に空華が話してくれたことを思い出した。
『まだ私のことを話していなかったな。何から話せばいいか・・・・・。
・・・そう、私はカルギア国の出身だ。
場所は・・・どこだったか・・・最近国から出てなかったからな・・・あぁ思い出した、ラケズスのはるか東にある』
とか何とか。
そのあとの話をすると長くなるから、かいつまんで説明しようと思う。
まず、空華は国の組織の偉い地位についていること(このことはあとで話そうと思う)、
空華の地位が『青の民』と呼ばれていること、
僕を連れて行くのは、その組織の一番偉いひとの命令で、空華が直々に任務をまかされたこと、
そして、なんと、空華が女性であったことが分かった!
(男か女か見分けがつかなかった、と話したら大笑いされてしまった)
食器を片づけていると、
「そろそろ行くとしよう」
空華が立ち上がった。
「カルギアまで、あとどのくらいかかるのさ?」
レオンが質問すると、ラーヴにちょうど荷物を積んでいた彼女がうーん、と唸った。
「時間でいうなら・・・飲まず食わずで3日、といったところだな」
何食わぬ顔でさらっといいのけるあたり、こういうことに慣れているらしい。
それじゃあ彼女は飢饉にあったとしても3日は生き延びることが出来るわけだ・・・。
そんなことを考えていると、
「3日も飲まず食わずにいたら、さすがに私だって死ぬと思うぞ・・・?」
考えを悟られたレオンが苦笑していると、出し抜けに空華が叫んだ。
「そこの奴、何を嗅ぎ回っているか知らないが、隠れてないで出てきたらどうなんだ?」
空華は鋭い視線で傍にある茂みを見つめていた。
彼女の右手はすでに左腰の刀へといっている。
「・・・・・・さすが、旅人は勘が鋭いな・・・しょうがない、出るから攻撃しないでくれよ」
空華の右手は未だ刀に触れたままだ。
そばの茂みから出てきたのは、自分よりも1つか2つ年上だと思われる男だった。
杖を持っている。彼は隣に小型のスクァドーラ(浮遊龍のことだ)を従えていた。
男の風貌を見る限り、魔法使いらしい。
「お前達、”司る者”か?」
男はこちらに歩みながら僕らに尋ねた。
空華が男を見据えながら言った。
彼女の右手はまだ刀にある。
「聞いてどうする。
それに、自己紹介しない初対面の相手に自分の素性を話す馬鹿がどこにいる?」
すると男は驚いた表情をし、それから苦笑した。
「すまないな。俺はユート・クスタルム、見ての通り分かると思うが魔法使いだ」
ユートと名乗る男は隣のスクァドーラを指差し、
「こっちはライル。スクァドーラだ」
空華がやっと刀を離した。
「私の名は空華。青の民だ」
「へーぇ、青の民なんて初めてお目にかかるぜ・・・・そちらは?」
どうやら僕のことを言っているらしい。
「僕はレオン。空華と旅をしてる」
「”青の民”が旅をしているとは!何事なのですか!?」
驚いた・・・あのスクァドーラが・・・ライルがしゃべっている・・・。
「何故こいつは言葉を話せる?」
空華がユートとライルを交互に睨みながら言った。
「普通、人間の言葉を喋れるのは妖精とかの高地位の魔物ぐらいのはずではないか?」
あぁ、そのことなら、とライルが前に進み出た。
「私は召喚獣なのです。ユート様が私に知能を与えて下さったのですよ」
空華が未だにユートを冷ややかな目線で見つめているのをよそに、その魔法使いは話しに戻った。
「・・・で、お前らは”司る者”なんだな?」
ユートがなにやら確信ありげに尋ねた。
「空華、”司る者”って何?」
レオンが振り返る。
「”聖飾を持つ、選ばれし神の子”、そしてこの世界を救える者のことだ。」
「”聖飾”って何だっけ?」
空華には悪いと思いつつも、素直に疑問をぶつける。
しかし彼女は静かに、
「まさしくお前のことだ、レオン」
と言っただけだった。
「そうか!!!!やっぱりお前ら”司る者”かぁ!!!」
空華がしまった、とばかりに俯く。
「な、俺も一緒に旅させてくれよ!な?男3人と一匹でさ!!」
ユートがここぞとばかり叫ぶ。
レオンは『男3人』という所を訂正しようか迷い、空華の方を見やった。
しかし彼女は別に気にしている様子も無く、
「誰が良いと言った!誰が!」とユートと討論しているだけだった。
「良し、決まりだな!今日からよろしくな!」
どうやらユートの執念に負けたらしい空華が、
とんだお荷物だな、と呟いていた。
口ではそう言っているものの、彼女の表情は少しだけ嬉しそうだった。
仲間ができて心強いのだろう。
しかし、僕らは”そこまで”は考えていなかった。
ユートは『どうやって一緒に旅をする』気なのだろう・・・。
此処まで読んでくれて有り難う御座います。
何年間にこれを書いたのか・・・・お恥ずかしい・・・
更新は皆無に等しいにせよ、私の頭の中の世界がどのような物かを分かっていただければ幸いです(笑)
お疲れさまでした・・・;;
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