■2 旅と仲間 【後編】
足が宙に浮く 10センチ・・・・20センチ・・・・
レオンが目をつぶる。
と、急にラーヴが安定した。おそるおそる目を開けると、足の下に自宅が見えた。とても小さく見える。
もうこんな高いところまで来ていたのか。
空華が唐突に叫んだ。
「振り落とされないようにしろ!行くぞ!!!」
2人を乗せたラーヴ2匹が、心地よいスピードで飛んだ。
********
何時間飛んでいただろう。空華が声をかけた。
「おい、下に降りるぞ。落ちるなよ」
ラーヴが降下し始めた。
なるほど、もうすぐ夕日が完全に沈み、星や月が見える時間帯だ。
ラーヴ達が足をつき、レオン達がゆっくりと降りる。
「今晩はここで野宿だ。ラーヴは暗闇では飛べないからな」
ふーん、と唸り返事をする。
ふいに、ある事を思い出した。
ラーヴに乗る前から聞きたかったことで、聞けずじまいになっていた事だった。
「そういえば何故、僕を空華の国に連れて行くのさ?僕は平和なただの国民なのに。」
鞄の中から鍋を出していた空華の手が止まった。
「そうだな。まず、急に連れてきてすまなかった。急いでいたものだからな・・・。」
くるり、と空華が座ったまま回れ右して話しはじめた。
「お前にはまだ話していないんだったな。」
ふぅ、と空華がため息をついた。周りに山や国はない。草木がおおい茂っているだけだ。
しかし、空華は”そこ”に山や国があるように、一点を見つめていた。
「レオン、この世界が崩れはじめているのに気づいているか?」突然の質問に、
「崩れ始めている・・・?」レオンはオウム返しに聞いた。
「3年・・・いや、早くて2ヶ月・・・・。それまでに何とかしないと・・・。」
イライラしてきたので、意見をぶつけることにした。
「空華、順を追って説明してよ。何がなんだか解らないから・・・。」
「あぁ、すまない。今、私の国では原因不明の砂漠化が各地域で起こってきている。私の国だけではない。
他の国でも原因不明の気候変化などが次々と起こってきているんだ。
最近聞いた話だと、『神々』に異変が起きているらしい」
「・・・『神々』って一体・・何?」
レオンが尋ねた。
「この世界を司る精霊のようなもの・・・・文字通り『神』だ。そして・・・・」
「・・・・・そして・・・何?」
レオンがまたもや尋ねた。
「私たちの世界は完全な砂漠化がすすみ、やがて金色の砂に覆い尽くされる。
完全に埋もれるまでは、2年もかからないと予想されている」
ふぅ、また空華がため息を漏らす。
「砂に埋まるって・・・じゃあ、やがて僕たちは死ぬってことでしょ?」
「あぁ。水はなくなり雨も降らなくなる。だから勿論、食料もなくなり人々が次々と死に絶え・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・人類も他の動物も滅亡だ」
滅亡・・・・・・頭に不思議に響いてくる。
「今は・・・・こんなに自然が豊なのに・・・・?」
おそるおそる、訊いてみる。
「・・・・・・あと早くて2ヶ月で雨の代わりに金色の砂が降ってくることになりかねない。これは事実なんだ・・・・・。」
「そんな・・・・。」
レオンは絶望に追い込まれた気がした。
「だからだ」
空華が呟く。
「お前の持っている聖飾があれば、この世界を救えるかもしれないんだ。
可能性は少ないが、やってみる価値はある!
この世界を救うには、レオン、お前の力が必要なんだ!!!!」
夕日が完全に沈んだ。
もう赤色をすっかり飲み込んでしまった、頭上にある紺色の夜空と、草原にかすかに沈みかけているオレンジ色の空。
紺から水色、水色から黄色、黄色から赤へと、グラデーションの美しい空。
その空を見ながら、金髪の少年が呟いた。
「・・・・・・・この僕にできる事なら、世界を救えるなら・・・・・・・・喜んで・・・・・。」
貴方も此処まで読むとは物好きですね。
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